オマーン国立博物館におけるスイス・デザイン展「CH-DSGN」
2023 | 03 | 10
2023年2月1日、P! Galerieはオマーン国立博物館の招待を受け、スイス・デザイン展《CH-DSGN – The Swiss Non-Conformists》を開催しました。 会場はマスカット旧王宮の正面に位置する同館の中央ホールで、開会式はスルタンのご子息、サイイド・ビラル・ビン・ハイサム・アル=サイード殿下により執り行われました。 この展示は、単なるデザイン展ではなく、概念的な声明でした。 舞台装置も演出もなく、ただ床に置かれたオブジェクトのみ。 「スイスの精密さ」や「機能美」といった常套句を繰り返す代わりに、本展は反体制性、粗野さ、そしてデザインにおける懐疑を主題としました。 ル・コルビュジエやピエール・ジャンヌレのユネスコ世界遺産作品、トム・シュトララなどの重要作が床の上に直接配置され、台座もガラスケースもありません。 会場全体は仮想建築のチョーク線で描かれた平面図となり、演劇家ブレヒトの「叙事的演劇」やラース・フォン・トリアーの『ドッグヴィル』の手法を引用した思考の空白(void)として機能しました。 来場者は作品に触れることを許され、椅子はアートとして隔離されるのではなく、再び「使えるもの」としての身体性を取り戻しました。展示はフェティシズムや教育的権威を退け、観客を能動的な思考者として招き入れたのです。 この形式は装飾的演出を一切排除し、市場的ミニマリズムではない、本質的な存在感を強調しました。何も隠さず、磨かず、ただそのままに。 「デザインは礼儀正しくあるべきではない。ラディカルでなければならない。妥協の文化に抗わねばならない。」 ペジャ・ハジ=マノヴィッチ(P! Galerie 創設者) 展示では、スイス正典で見落とされてきた実験的で不完全な家具が取り上げられました。 その素朴で遊戯的な美学は、抑制と静謐を重んじるオマーン文化に深く響きました。 展示は道徳やサステナビリティを説くのではなく、価値・儚さ・異文化間の共鳴を考えるための空間を創出しました。 やがてチョークの線が消えていくその構成自体が、無常の隠喩となったのです。 それは妥協ではなく、ラディカルなキュラトリアル決断であり、従わないオブジェクトのための非協調的舞台でした。 Back
