この椅子は建築家ヘリット・リートフェルトによって1917年にデザインされ、1925年以降、リートフェルトは彼の信頼する職人 Gerard van de Groenekan に自身のモデルの製作を正式に託しました。デ・ステイル運動における初期の作品のひとつとして位置づけられています。椅子自体は1917年にデザインされましたが、原色(赤・青・黄)で塗装されたバリエーションが登場するのは1923年前後です。リートフェルトは常に「単純さ」を目指し、手仕事のみならず将来の量産を見据えた家具を構想していました。「レッド&ブルー・チェア」では、建築作品と同じように垂直と水平の平面を操作しています。単純な矩形の構成とすることで、大量生産を可能にし、職人を重労働から解放しようと考えていました。初期の制作の一部は、同じくリートフェルトが1924年に設計したユトレヒトの「リートフェルト・シュレーダー邸」のために作られたものです。この住宅はデ・ステイル建築を代表する作品のひとつであり、後に美術館として転用され、現在はユネスコ世界遺産に登録されています。デ・ステイルは、第一次世界大戦の惨禍に対する反動としてオランダで生まれた芸術運動です。幾何学的な形態と原色による視覚言語を通じて、当時の混沌とした世界情勢に対する「調和」と「均衡」を探ろうとしました。
本作品はオリジナルの彩色を保っており、再塗装は一切されていません。現存するごく限られたオリジナルの一脚に数えられます。